記録帳

日常の体験と、読書、映画の感想を主に書きます。

絵のこと その2

父の遺品整理 つづき  

 (本題の絵がなかなか出てきません。)

 私の実家の母屋は築140年です。なぜわかるかというと、固定資産税の評価額一覧に建築年月日が明治2年と記載されているからです。ひいひいおじいさんの代に家が火事で焼けて建て直したそうです。・・・そのいきさつも相当ドラマがあるのですが(絶望したひいひいじいさんは沼に身を投げて亡くなり、残されたひいひいばあさんが獅子奮迅の働きで家を再建したとか)、まあ、そんなことは置いといて、あちこち痛みが出て来ているので、だれも住んではいないんだけど、まあ修理をしておこうかという話が、父の亡くなる前から出ては消え、出ては消えしていました。その話の一番の妨害者だった父が亡くなったので、今や心置きなくリフォームができるじゃないの、と遺品整理のついでに母屋の大掃除をしているわけですが、これがまあ、大変だったこと・・・とても一言では言い尽くせません。

 父のタンスと本棚の他に、祖父の本棚2本、茶箪笥1つ、母の婚礼ダンス3棹、祖母のタンス3棹、曾祖母のタンス3棹。もー、タンスだらけで、何度便利屋さんを頼んで、クリーンセンターまで運んでもらったかわかりません。それも、母が抵抗するのを必死で説得し、何ヶ月もかけて中身を整理したのです。だって、もし母がポックリ逝ってしまったら、このボーダイなゴミの山を誰が片付けるっていうのでしょう。(もちろん、ビンボーくじばっか引く私に決まっています。)

 さて、母屋の大物があらかた片付いたので、紫檀の茶箪笥だとか、クソ重い座卓だとか、捨てるに捨てられないようなものをよけておこうと思い、の戸を開けたところ、な、な、なんと、

そこには、ゴミの山が、戸口まで詰まっているではありませんか!・・・・ガーン!

「こ、こ、これは、いったい、何!」

と、母に詰問すると、おばあさんが亡くなった時、葬儀をするために、母屋のいらないものをみんなここへ放り込んでおいたのだと言います。おばあさんが亡くなった時って、かれこれ、20年以上はたってるじゃないのよー!キー!

私は心が折れそうになりました。新たなゴミの山に脱力してしまい、当分何も手がつけられませんでした。

 

 しかし、うじうじしていても物事は進みません。ようやくやる気になって、夫と息子を駆り出し、蔵の片付けに着手しましたが、また、これが大変でした。姉の大学時代の家財道具(!)をかき分けると、その下からおばあさんのベッドが出てきて、ベッドの上の新聞紙の束を除けると、その隣にひいおばあさんのベッドがあることが判明。四苦八苦してそれらを引っ張り出すと、さらにその下に戦前の古本や雑誌の束がぎっちりと隠してあることが判明・・・・・

どんだけ本に埋もれた家なんじゃー!

私はもう、ヒステリーを起こしました。

 

 ベッドは苦心惨憺しながらバラし、軽トラで3往復して金物、古紙、家電、みんな廃品回収業者に引き取ってもらいました。私があんまり怒るので母はあせって、蒸篭やもろぶた、笊や竹の虫かごなど燃やせるものはみんな、早起きして毎朝せっせと畑で燃やし、やっと蔵の土間が見える状態まで片付きました。

そうしたら、出てきたのです・・・、

絵が・・・(やっと絵が出てきました。)

 私は思い出しました。昔、父が絵(版画)をたくさん買い集めていたことを。蔵の隅に無造作に放ってある数点の絵は、その時の名残に違いありません。取り出してつくづく眺めていると、母が言うのです。

 お父さんは、結婚してからずっとお給料を渡してくれなくて、みんな本や絵を買うのに使っていた。まともに渡してくれるようになったのは、おじいさんが亡くなってからで、それまでは「自分で稼いだ金を自分で使って何が悪い。」と言って、時々ボーナスの一部をくれる他は全然くれないから、私は苦労した。絵も、「持っていれば価値が上がる」と言って投資目的で買ったらしいけど、私は後で儲かるより、今お金をもらった方がずっといいわと思っていた。

・・・って、なんじゃー、そりゃー!

そうか、そういえば、子供の頃、うちは何となく、貧乏なような気がしていました。まあ、うちは農家だから食べるのには困らないし、副業やら地代やらおじいさんの恩給やらあって、仮に父がお給料を渡さなくってもなんとかやって行けてはいたのです。でも、決して余裕があったわけではありません。私らの服はみな母の手作りか、いとこ達のお下がりでしたし、私は高校3年になるまでお小遣いというものをもらったことがありませんでした。「まあ、うちは貧乏なんだからしょうがない。」と思って、特に不幸にも感じていなかったのですが、そういうカラクリがあったのか・・・。

もう、頭にきました。

これで、ついに、父の評価は決まりました。

ロクデナシ!

これで確定。亡くなる前、認知症を患って3年間、周囲をきりきり舞いさせ、ガンで入院してからも亡くなるまで罵詈雑言吐きまくって私らを悲しませたことはまあ許す。でも、これはひどいでしょう。

 遺品整理をしていて、ジワーっとわかってきたような気がしてました。持ち主である父の自己顕示欲の強さ。熱しやすく冷めやすい性格。高価なものを持ってさえいれば人が尊敬してくれるに違いないという勘違い。一言で言えばわがままで自己中心的。自分の親でなければ絶対関わりたくないタイプのロクデナシ!

 

ゼイゼイゼイ・・・、せっかく絵が出てきたのに力尽きてしまいました。

・・・つづく